自由社版歴史教科書私立6校採択 藤岡信勝会長は辞任

自由社版教科書採択状況(「新しい歴史教科書をつくる会」発表)
歴史 公立=ゼロ 私立=6校
公民 公立=東京都立特別支援学校 私立=1校

毎日新聞
「つくる会」:主導の中学歴史教科書 公立校で採用ゼロ
 
新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが5日、文部科学省で記者会見し、来年度から使われる中学校の歴史教科書について同会が主導した自由社版の採択が公立校でゼロだったと発表した。同会によると、私立は6校あり、推定採択率は0.05%と、前回09年度の1.1%から低下。公民は都立特別支援学校中学部20校、私立1校で採択され、推定採択率は0.02%だった。不振の責任を取り藤岡信勝会長(67)は辞任し、杉原誠四郎・帝京平成大教授(70)が新会長に就任した。

読売新聞
歴史教科書の盗用問題、藤岡信勝氏が引責辞任
 
中学校向けに自由社(東京都文京区)が編集した2012年度版「新しい歴史教科書」の年表が他社教科書からの盗用だった問題で、「新しい歴史教科書をつくる会」は5日、教科書の代表執筆者だった藤岡信勝拓殖大客員教授(67)が8月31日付で同会会長を引責辞任したと発表した。
新会長には、杉原誠四郎・帝京平成大教授(70)が就任した。藤岡氏は理事としてとどまる。
藤岡氏は「チェックが甘かった。不明をおわびしたい」と辞任理由を述べた。同会によると、「新しい歴史教科書」は来年度、全国の私立6校で使用されるが、国公立校での採択はなかった。

年表盗用の自由社版教科書は回収されていない!


この写真は、回収されずに東京都内の有名書店の店頭に置かれている自由社版歴史教科書の市販本です。
自由社=「新しい歴史教科書をつくる会」が歴史教科書の年表を東京書籍から盗用したことを認め、市販本の回収を書店に依頼したものの、最初に盗用した2010年度版(08年度検定合格、09年度採択)の教科書が、今も横浜市立中(8区)や一部私立中で使われています(8日付「年表盗用・自由社は現行版も回収せよ!」)。
写真の市販本は、その10年度版教科書の市販本で09年5月に発売された「日本人の歴史教科書」(ISBN:4915237508)です。自由社が書店に回収を依頼したのは今年発売された「市販本 新しい歴史教科書」だけで、「日本人の歴史教科書」は回収対象にしていません。
年表盗用の元祖が店頭に堂々と残っているのです。
この問題については高嶋伸欣さんも横浜市内の書店で「日本人の歴史教科書」を発見し、「週刊金曜日」8月19日号で下記のように指摘しています。

それでも遅まきながら、8月1日になって、各紙が一斉に自由社版歴史の年表盗用問題を報道した。これで、藤岡信勝氏による自由社版は、採択の場からの脱落が決定的となった。
だがこの件の報道も浅薄で、年表盗用は10年度使用の現行版の時からであると指摘したのは、『朝日新聞』と共同通信の配信記事だけだった。さらにそれらも、現行版の市販本『日本人の歴史教科書』(自由社)を回収の対象とする必要性には、言及していない。自由社版が09年に採択された横浜市内の大型書店では、今回の見本本(引用者注・市販本の誤り)を回収したが、『日本人の……』の方は、8月3日以後も店頭に置いている。

あきれる被爆地。自由社、長崎原爆写真を「広島」と説明


 
長崎新聞 9日付朝刊
長崎原爆を広島と誤記 教科書写真 自由社 訂正申請へ
 
新しい歴史教科書をつくる会」が主導し、今春の教科書検定に合格した自由社(東京)の中学歴史教科書の2012年度版で、「広島に投下された原子爆弾」として掲載された写真が、長崎に投下された原爆の写真だったことが8日、分かった。
来春から使用予定で、同社は近く文部科学省に訂正申請する。
自由社によると、同じ写真は11年度版には「爆発した原子爆弾」として掲載していたが、担当者が説明文を差し替えた際に間違えたという。
自由社の中学歴史教科書では、日本史年表のほぼ全部を東京書籍の教科書から流用していたことも判明している。
 
中国新聞 9日付朝刊
長崎原爆写真「広島」と誤記 自由社の中学歴史教科書
 
新しい歴史教科書をつくる会」が主導する自由社(東京)の2012年度版中学「新しい歴史教科書」で掲載した、長崎の原爆投下時の写真説明を「広島に投下された原子爆弾」と誤記していたことが8日、分かった。自由社は近く文部科学省に訂正を申請する。
自由社によると今月、外部からの指摘で発覚した。長崎への原爆投下時のきのこ雲を撮った写真だったが、執筆者が広島だと思い込んで説明を書いた、という。教科書は今春の教科書検定に合格。各教育委員会が来年度の教科書を選ぶための見本の段階で、使用している学校はない。
この教科書をめぐっては、日本史の年表のほとんどを東京書籍(東京)の教科書から流用していたことが判明したばかり。自由社は「大変申し訳ない。現時点で学習上の支障はなく、写真説明を訂正する」としている。5月に発売した市販本は回収を進めている。
文科省は「検定では明確な違いだと認識できなかった。訂正してもらい、速やかに内容を確認したい」としている。(野田華奈子)
 
朝日新聞 9日付朝刊
原爆写真 長崎を「広島」と誤記 「つくる会」主導編集の教科書 12年度版
 
新しい歴史教科書をつくる会」主導で編集された「自由社」(東京都文京区)の2012年度版の中学校歴史教科書で、長崎で原子爆弾が爆発した写真を「広島に投下された原子爆弾」と誤記していたことがわかった。
現在学校で使われている10年度版には、投下地を特定せず「爆発した原子爆弾」との説明で同じ写真が掲載されているが、つくる会の執筆者が12年度版を作る際に、広島の写真と思い込んだという。
現在、来年度から使う教科書を各社の12年度版から選ぶ「採択」の作業が、各地で行われている。同社は今後、文部科学省に訂正を申請し、12年度版の使用が始まる来年春までに修正すると説明している。
自由社の12年度版をめぐっては、東京書籍(東京都北区)の02年度版教科書から年表の多くの部分を流用していたことが判明しており、自由社文科省に訂正申請して新しいものに差し替える考えを示している。同社の担当者は「教科書の信用性を失う問題が続き、大変申し訳ない」と述べた。

年表盗用・自由社は現行版も回収せよ!

自由社が他社から盗用した年表は、現在採択手続き中の来年度版だけでなく、昨年度から今年度まで横浜市立中(18区中8区)や一部私立中で使われている現行版でも使われていることを忘れてはなりません。
4日付神奈川新聞から

継続使用に疑問の声、年表盗用の自由社中学校歴史教科書/横浜
 
東京書籍の教科書から年表を盗用していた自由社版の中学校歴史教科書を使っている横浜市内8区の73中学校では3日、今後もこの教科書を使い続けることが分かった。市販本は回収を始めた自由社が、教科書では新版(2012年度版)の年表差し替えにとどめ、現行版(10、11年度版)については措置しないため。社会科教諭たちからは「子どもに教えるのにふさわしいのか」と疑問の声が上がっている。
 ■ほぼ引き写し
自由社は年表について「以前からほぼ引き写しであり、東京書籍の著作権を侵害した」と認め、東京書籍と協議し(1)市販本の回収(約1万冊)(2)各自治体の教育委員会に送った新版見本本の年表差し替え(3)横浜市立中学校など現行版を使用している中学校長へのわび状送付―の措置を取るとした。各教委で現在行われている採択の対象である新版についても、文部科学省に訂正申請し差し替えるという。
一方、中学生が使っている現行版について、自由社は「年表自体は間違っておらず、差し替えなどは逆に混乱を招く恐れがある」と対応を検討していない。東京書籍側も、盗用は遺憾としながらも「権利関係など、あくまで(自由社と)2者間の問題。他者を巻き込むことは是としない」と、新版に限って年表の差し替えを要求している。
 ■「信用できぬ」
取り残されてしまったのは、横浜市立中学校の3万人近い生徒たち。10年度から使用されている教科書は、卒業まで使うことが決まっている。
「これでは教科書が信用できなくなってしまう」。自由社の歴史教科書で教える市立中学の50代男性教諭はため息交じり。昨年、掲載内容に誤りがあったとして正誤表が配布されたばかりで、「子どもに教える教科書としてふさわしいのか疑問だ」。ただ生徒たちにそう伝えるのは「あまりにも忍びない」。副教材も活用し授業展開を模索しているという。
 ■「問題はない」
横浜市教委は「現行の教科書を使い続けることについて、文科省も問題ないとしており、法に照らしても市教委として取るべき措置はない」としている。
横浜市教委は09年8月、市内8区で現行版を採択。4日、全市一括採択に制度変更した12年度から使用する中学校の教科書採択を行う。
2011/08/04 16:00 【神奈川新聞】

横浜市全域で「改善の会」育鵬社の教科書採択

横浜市、歴史と公民の教科書に育鵬社版を採択
 
横浜市教育委員会は4日、2012〜15年度に市立中学149校で使用する歴史と公民の教科書に、育鵬社版を採択した。
同社によると、採択は全国で6例目だが、横浜市では4年間で生徒約10万人が使うことになり、これまでで最多の使用規模となる。
歴史、公民ともに、7社の教科書から教育委員6人が記名投票し、4人が育鵬社版を選んだ。同社版は、「新しい歴史教科書をつくる会」元会長らが参加する「教科書改善の会」が執筆。「歴史を多面的にとらえられるように」と、太平洋戦争について「(大東亜戦争)」と併記している。一方、市民団体が不採択を求める署名を市教委に提出していた。
(2011年8月5日11時03分 読売新聞)
 
「育鵬社」採択 市民団体が批判 中学教科書 市教委「勇気もって答え」
 
横浜市立中学校149校で、来年度から4年間、育鵬社版の歴史と公民の教科書が使われることになった。
育鵬社版は、「新しい歴史教科書をつくる会」元会長らが参加する「教科書改善の会」のメンバーが執筆。歴史認識などを巡り賛否が分かれている。
4日の横浜市教育委員会定例会の会場では、20人の市民が傍聴。抽選に漏れた500人以上は近くのホールで会議の音声中継に耳を傾け、海外メディアも取材に訪れた。審議では、委員から「伝統と文化を尊重し、日本に誇りを持てる内容になっているかが重要」「歴史認識に関しては極端でないことが大切」などの意見が出た。
同市教委が2009年、市内18区のうち8区で「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーらが執筆した自由社の歴史教科書を採択した際は、無記名投票で決定し、批判を浴びた。今回は「教育委員の権限と責任は重い」として記名投票を選択し、6人の委員のうち4人が育鵬社版を選んだ。
定例会後、不採択を求めて約11万1000人分の署名を市教委に提出した市民団体「横浜教科書採択連絡会」のメンバーは「教育委員の思想信条で子どもたちの教科書が決められた」と批判。
一方、記者会見した市教委の今田忠彦委員長は育鵬社版について、「多角的な見方をしていてバランスが取れている。様々な見方があると思うが、勇気をもって答えを出した」と述べた。また、育鵬社版に反対する人たちから辞任要求があったことを明かし、「教科書採択が教育の世界におけるイデオロギー闘争の象徴になっている」と不快感を示した。
(2011年8月5日 読売新聞)

自由社版教科書による盗用、市販本回収 一斉に報道

各紙夕刊に掲載されているとみられます。

歴史教科書:他社の年表流用が発覚、自由社が回収
 
新しい歴史教科書をつくる会」主導の教科書を作成している「自由社」(東京都文京区)が今年発行した中学用歴史教科書「新しい歴史教科書」で、年表の大部分を他社の教科書から流用していたことが分かった。自由社著作権侵害の恐れがあると判断し、市販本約1万5000冊の回収を進めている。
自由社によると、問題の教科書は3月に国の検定に合格。横浜市内8区で使用され、書店でも1冊1260円(税込み)で販売されている。巻末の年表のほとんどの項目が、東京書籍発行の02年度版教科書と一致していた。
自由社は東京書籍に謝罪。7月中旬に文部科学省横浜市教委などに報告、同27日から回収を始めた。自由社は「当時の編集長と連絡が取れず、経緯が確認できていないが、編集者として常識外の行動で申し訳ない」と陳謝。東京書籍は「大変残念で遺憾」としている。【福田隆】
毎日新聞 2011年8月1日 14時13分

自由社の歴史教科書、他社の年表盗用…謝罪
 
中学校向けに自由社(東京都文京区)が編集し、文部科学省の検定に合格した2012年度版「新しい歴史教科書」に掲載された年表が、東京書籍の02年度版教科書から盗用されていたことがわかった。
自由社は編集著作権を侵害したと認めて東京書籍に謝罪し、5月に発売した一般向け市販本の回収も決めた。年表も新しい内容に差し替える。文部科学省は「他社教科書の丸写しは聞いたことがない」として、自由社を厳重注意した。
文科省自由社によると、自由社の教科書が掲載した年表で、「大東亜戦争」など一部の表記が異なるほかは、縄文時代から現代までの出来事約180項目のほぼすべてが東京書籍のものと同じだった。
自由社では「編集担当者が退社し、当時の事情がわからないが、東京書籍の編集著作権を侵害したことは間違いない」と話している。
(2011年8月1日14時38分 読売新聞)

他社教科書の歴史年表流用 「つくる会」系、自由社版
 
新しい歴史教科書をつくる会」が主導し、今春の教科書検定に合格した自由社(東京)の中学歴史教科書の2012年度版が、日本史年表のほぼ全部を東京書籍の教科書から流用していたことが1日、分かった。
文部科学省が注意し、自由社は訂正申請するという。
自由社によると、10、11年度版や、今年5月に発売した市販本でも流用していた。同社は編集著作権を侵害したことを認め、東京書籍に謝罪。横浜市立中学校など使用中の学校や教育委員会にも謝罪と経過報告を記した手紙を送った。市販本は回収を始めた。
基になったのは東京書籍の02年度版の年表。
2011/08/01 20:25【共同通信

自由社が市販本のみ回収。採択用見本本は回収せず

31日付「しんぶん赤旗」より

戦争美化教科書 自由社が市販本回収 他社年表を引き写し
 
他社の教科書からの年表の引き写しが発覚した自由社中学校教科書『新しい歴史教科書』の市販本を、同社が回収していることが30日、わかりました。
本紙の取材に対し同社は「著作権上の問題で東京書籍との約束で回収を行っている」としています。見本本については回収は行わず、各教育委員会に対して「経緯と理由を説明した文書を配布している」といいます。
同社の教科書は戦前の日本が起こした侵略戦争を美化するもので、歴史と公民が今年3月に検定合格しました。同社は各教育委員会などに配布する見本本のほかに、一般書店で販売する市販本を発行していました。
ところが歴史教科書の年表が東京書籍『新しい社会・歴史』2002年度版から盗用したものだと子どもと教科書全国ネット21などから指摘を受けました。180項目すべてで出来事の選択が一致し、うち9項目を除いて表現も同じでした。指摘を受けて自由社は「ほぼ引き写し」であることを認めていました。
引き写しの経緯について同社は「年表を担当していた編集委員が会社を辞めてしまったため、連絡が取れず把握できない」としています。しかし、同社はその元社員に電話もしていないといいます。
同社の歴史教科書は2010年から横浜市の18区中8区で使われています。今年から教科書採択が全市一区となった同市では、同様に侵略戦争を美化する育鵬社の教科書とともに採択しないように求める声が高まっています。