改善の会・育鵬社教科書を自民党が全面支援


しんぶん赤旗 21日付
教科書は誰のもの(4) 安倍氏祝福メッセージ
自民党「本気」の介入

 
9月21日。台風15号が日本列島に上陸し、大きな被害を出したこの日の夜、東京都内で「育鵬社版教科書の採択報告と懇親の夕べ」が開かれました。主催したのは、実質的に育鵬社版教科書をつくった日本教育再生機構教科書改善の会です。
 
 党をあげて
 
育鵬社版教科書「大躍進」の祝賀会であるこの夕べに、自民党安倍晋三元首相が祝福のメッセージを寄せました。「日本人の美徳と優れた資質を伝える教科書が今後4年間で約25万名の子供たちの手に届くことになったことは、教育再生の基盤となるものと確信します」
自民党育鵬社版教科書の採択に党をあげて手を貸したことを象徴するできごとです。
安倍元首相は5月に教育再生機構などが開いた「育鵬社教科書出版記念行事」に参加してあいさつ。「育鵬社が今夏の採択で大きな成功を収めるように、一緒になって頑張りましょう」
教育再生機構の機関誌『教育再生』6月号)と露骨に育鵬社版の採択率アップを呼びかけました。
育鵬社への支援は安倍氏の個人的な行動にとどまりません。
同党は5月、全国に向けて「中学校教科書採択への取り組み」についての通知を出しています。再生機構は『教育再生』7月号にその通知の内容を掲載。「自民党が今回は教科書で本気だ」などと書いています。
それによると通知は、中学の歴史・公民教科書の大半は「教育基本法の理念・精神が十分反映されたものとは言えず、誠に還憾」とし、「首長らに『自衛隊違憲とする教科書についてどう思うか?』などと率直に考えをただす」ことなどを地方議員に求めています。
自民党はさらに政務調査会発行のパンフレットを「議会質問用参考資料」として地方議員向けに出しています。「国旗・国歌」「自衛隊」「拉致問題」などについて、事実上、育鵬社が有利になるような質問例を掲載し、地方議員が議会で取り上げるように指示したものでした。
 
 議連が総会
 
2月には自民党の国会議員有志でつくる「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(通称・教科書議連)が総会を開きました。
同議連は1997年に結成され、日本軍「慰安婦」の記述をなくすよう教科書会社に圧力をかけるなどしてきました。今夏の教科書採択に向けて活動を再開したのです。
同議連の新会長となった古屋圭司衆院議員は4月22日の衆議院拉致問題特別委員会で民主党中野寛成拉致問題担当相(当時)に、育鵬社の公民教科書の拉致問題にかんする記述を示し、「どういう印象をもつか」と質問。中野担当相は「育鵬社、よくここまで書いていただいたなという意味では敬意を表したい」と答えました。
再生機構はさっそく『教育再生』5月号にこのやりとりを掲載。宣伝に利用しました。
地方議会でも日本会議地方議員連盟のメンバーらが中心になって自民党のパンフレット通りの質問。「改正教育基本法の目標を達成するため、最も適した教科書の採択を求める決議案」などを出し、圧力をかけました。
育鵬社版教科書は自民党の不当な介入の中で、各地で採択されたのです。 (つづく)