「松本謙一グループの責任」と「全権代行・藤岡信勝」のジレンマ

この春から横浜市立中学校などの生徒たちが使っている「新しい歴史教科書をつくる会」の自由社版歴史教科書の膨大な欠陥が明らかになってきました。
その「つくる会」は八木秀次氏らが離脱した後も内紛を起こしています。自由社版教科書の作成を担った自由社取締役教科書編集室長の松本謙一氏が追放され告発文を発表しているのです。
 
 ・私はこうして自由社を追放された! 元幹部の告発文(2009.8.18)
 ・「自由社」元役員・松本謙一氏の告発メール第2弾(2010.1.21)

 
そして、その松本謙一氏が連れてきた編集スタッフ2人が、賃金が支払われていないとして自由社東京地裁に提訴しました。
 
 ・元スタッフが提訴 自由社に教科書発行の資格なし(2010.6.15)
 
松本氏は原告側を支援して東京地裁に陳述書を提出しています。
 

 ・独占入手 自由社元役員が法廷に出した陳述書(上)(他サイト)
 ・独占入手 自由社元役員が法廷に出した陳述書(下)(他サイト)

 
それによると、

同年(2009年)4月12日の日曜日、藤岡氏は「加瀬社長の命令である」として「自由社の経営、業務に関する全権を自分が代行する」と宣言しました。私は即日、藤岡氏に対して、「そのような重大事項は株主総会の承認を経て行われるべきではないか?特に、経営の最終責任の所在がうやむやでは対外的に通用しない」と指摘し、翌日、監査役である三堀清弁護士にも「会社法に照らしても、役員でもない一株主に、株主総会の承認もなく社長が経営権を移譲してしまう、というのは疑義はないのか?」と糾しましたが、加瀬氏の「これはビジネスでなく運動だから、それでいいのです」の一言でことごとく押し通されました。

裁判で自由社は編集スタッフの仕事の拙劣さを強調して賃金不払いを正当化する、あるいは額の引き下げを主張するのでしょう。しかし仕事の拙劣さを主張すればするほど、欠陥教科書であることを認めるジレンマに陥ります。
スタッフの仕事が拙劣であろうと、欠陥教科書の最終的な責任は発行元の自由社にあります。陳述書によると、藤岡信勝氏(自称拓殖大学教授、実は客員教授)はつくる会会長」「自由社版教科書代表執筆者」に加え自由社の経営、業務に関する全権を代行」しているのですから、加瀬英明社長とともに全責任を負わなければなりません。

文部科学省が現在検定中の自由社版教科書第2版についても重大な問題が明らかになっています。松本謙一氏はこう書いています。

追記;自由社は今年(平成22年)4月に文部科学省に検定申請した中学校歴史教科書白表紙本に,私が現行版に提供した図版4点を,事前に承諾を求めず再利用していることを,検定に見本提出後に及んで私に知らせ,事後承諾を求めてきましたが,当該白表紙本はどういう歴史認識でまとめられたものなのか,明かではありませんので,私は再利用を拒絶しました.石井竜生出版部長の業務管理のもと,新規白表紙本の制作進行が場当たりで杜撰であることを垣間見せる事実として紹介しておきます.

自由社は、著作権者に無断で図版を使った白表紙本を検定に提出しているのです。
この春から学校で使われている供給本も、現在検定中の白表紙本も、自由社にお返ししなければなりません。