自由社版教科書回収を横浜市教委に請願

横浜市民がようやく動き始めました。文科省にもやればいいと思いますが…。
22日付朝日新聞 「訂正版求めよ」市民団体が請願 教科書問題、市教委に
横浜市8区の市立中学校で今春から使用が始まった自由社版歴史教科書について、反対する複数の市民グループなどでつくる「横浜教科書採択連絡会」は21日、同教科書に史実の間違いや編集ミスが多いことを理由に、教科書の回収と訂正版の発行を自由社に求めるように市教育委員会に請願した。自由社にも訂正措置を取るように求めた。
同連絡会によると、検定合格後、自由社文部科学省に40カ所の訂正を申請。発行後も、裏焼きや向きの違う写真を載せたり、その時代の史実にあっていない説明を載せたり、複数の個所に記述の誤りや編集ミスが研究者や教育関係者から指摘されてきたという。請願では「教員に対して記述の誤りが多数あることを周知徹底してほしい」と求めた。
22日付神奈川新聞 自由社版教科書で請願
新しい歴史教科書をつくる会」が主導し、自由社(東京)が発行する中学校歴史教科書が横浜市内18区のうち8区で採択されたことに関連し、市民団体の横浜教科書採択連絡会は21日、横浜市教育委員会の今田忠彦教育委員長あてに訂正版教科書の配布要求を発行者に行うことを求める請願を提出した。併せて、自由社に対して配布した教科書の回収、訂正版教科書配布の要求書を同日付で送付した。

横浜市教育委員会
今田忠彦教育委員長様
                                 2010年9月21日
                                 横浜教科書採択連絡会
                                 請願代表者 高橋 進
                                 連絡先 横浜市中区相生町1−18
                                       光南ビル教科書・市民フォーラム内
 
          採択された自由社版歴史教科書の訂正版教科書の配布要求を
          発行者に行うことを求める請願
 
<請願項目>
1,自由社に対し、早急に教科書の回収と訂正版教科書の発行・配布を要求すること。
2,自由社に対し、訂正版教科書配布までの当面の訂正措置として、訂正シールまたは正誤表の配布を要求し、子どもたちが誤ったまま教えられることの無いようにすること。
3,自由社版歴史教科書を使用する各学校および教員に対して、記述の誤りが多数あることを知らせ、注意を促すこと。
 
<請願理由>
 貴教育委員会が採択した自由社版歴史教科書「新編 新しい歴史教科書」(2010、2011年度使用)は、現在横浜市の中学校の約半数で使用が始まっています。
 この教科書については、検定合格後、自由社自身が文科省に対し40カ所にわたる訂正申請を行いました。検定合格後40カ所もの訂正がなされたのは異例ですが、これは検定合格しても間違いが多数あることを文部科学省自ら認めていることでもあります。
 さらに生徒の手に届けられた供給本においても、多くの歴史研究者や社会科教育関係者から、他社では例の無いような多数の史実や記述の誤り、編集上のミスが指摘され、報道や参考資料集などで一般市民も知るところとなっています。
 横浜市内の多くの中学校では、9月になって歴史の授業が始まりましたが、多くの保護者・市民からこんなに誤りの多い教科書を、そのまま使用してよいのかという疑問の声が寄せられています。
 
 教科書は、国の税金を使って配布されますが、一般の商品売買と同様に独占禁止法等が適用され、公正で誠実な商取引が求められます。同時に教科書の特殊性に鑑み、教科書発行者には資本金や役員構成など様々な規制があり、一般図書発行者とは異なる、教科書発行者としての重い責任を全うすることが求められています。
 商取引においては、発売元が、不良品の販売がないように注意に注意を重ね、万一不良品を売った場合は、ただちに回収し、適正な新品と交換するのは当然の行為です。他の教科書発行者の場合は、誤りやミスがあれば、教科書を回収し、訂正を行った教科書を刷り直して配布したり、正しい表記のシールや正誤表を配ったりして、教科書発行者としての責任を果たしています。英語の教科書では、冠詞や大文字と小文字の欠落や誤りだけで、全ての供給教科書を回収し、訂正版を配布した発行者もありました。
 
 自由社版については、史実の間違いだけでなく、キトラ古墳真如堂縁起絵巻の写真の裏焼きや、初出の漢字やルビ、書体・体裁の不統一等が余りにも多いことなど、全体を通じて極めて杜撰な編集であったことを示す例が多数あります。したがって、子どもたちが適正な教科書を使用するためには、一部訂正の措置だけではなく、記述内容を訂正し、表記を統一した訂正版教科書を再発行すべきと考えます。
 しかし自由社は、多数の誤りを指摘されてもなお現在まで、再発行はおろか何の謝罪も訂正措置もとっていません。一般社会では考えられない不誠実な行為です。
 
 自由社版には突出して誤りが多いことは見本本発行時点で指摘されていましたが、貴教育委員会は、その責任と権限において自由社を採択したと主張してきました。検定合格していても誤りが多数存在することは、上記のように文科省も認めています。したがって貴教育委員会は、採択(発注)した責任者として発行者(発売元)に訂正措置を求める責任があります。訂正の措置は、子どもたちや教員、貴教育委員会、市の税金で行うのではなく、発行者が負担すべきことだからです。貴教育委員会が一刻も早く、教科書の回収と訂正版の発行・配布等の訂正措置要求を自由社に行い、子どもたちが間違ったままの教科書で教えられることのないよう、採択した者の責任を果たすことを求めます。
                                                        以上
 
自由社教科書 文科省告示第33号に反する明白なまちがい・不適切な例の紹介(抜粋)
 
(1)3頁 キトラ古境の壁画写真の裏焼き
  (1)北斗
  (2)玄武
  (3)白虎
  (4)青龍(裏焼きだけでなく横向きの壁画を下向きにしている)
「通常の約束、方法に従って記載されて」いないために、生徒が「誤解するおそれ」がある。
※近くに添えられた壁画イラスト(正しい位置で記載)との違いで混乱するおそれがある。
 
(2) 17頁 遮光器土偶の説明
「目が異様に大きいことから、サングラスをかけているようだという意味の名前がつけられた。」
正しくは、北米のイヌイットエスキモー)たちが雪目にならないように丸板に横一文字の切れ込みをいれた遮光器をつけているようすに似ているためであり、生徒が「誤解するおそれのある表現」である。
 
(3) 33頁 稲荷山鉄剣銘文
「大王がこの地方の豪族に与えた剣であった」とするが、銘文には先祖代々「杖刀人首」として大王に使えてきたオワケノ臣がそのことを記念するために作らせたことが記されており、生徒が鉄剣の歴史的意義を「理解し難い」説明である。説明が不適切である。
 
(4) 72頁 大衆や武家の仏教と鎌倉文化
鎌倉時代には「大衆」は「だいしゅ」とよみ、僧兵をさす。鎌倉時代の項目において、一般大衆の意味で「大衆」の語を使うのは「不正確」であり、「誤解するおそれのある表現」である。
 
(5) 73頁 三十三間堂は「宋の文化に影響され、簡素ななかにたくましさがあふれる寺院建築」
蓮華王院の三十三間堂は、和様、入母屋造り本瓦葺きの建物であり、「内容に誤り」がある。
 
(6) 86頁 真如堂縁起絵巻 写真の裏焼き
「通常の約束、方法に従って記載されて」いないために、弓手は左手、馬手は右手のはずが全員逆で全員が左利きのようになっており、生徒がそのように「誤解するおそれ」がある。
 
(7) 93頁 銀は金と同じかそれ以上の価値を持っていた
15,16世紀の金銀の比価は、概ね金:銀が11〜12:1程度であり、「内容に誤り」がある。
 
(8) 123頁 伊万里焼きや九谷焼きはヨーロッパで高い人気をよんだ
九谷焼きが輸出されたのは明治以降である。江戸時代の日蘭貿易を説明する項目でこのように記述すると、生徒は江戸時代から九谷焼が輸出されたと「誤解するおそれ」があり、「不正確」な記述である。
 
(9) 129頁 鹿鳴館時代の婦人の洋装
写真は明治末期の上流婦人の洋装であり鹿鳴館時代のドレスではない。「内容に誤り」がある。
 
(10) 177頁 東京駅 全長およそ250m
文化庁のデータで335mあり、「客観的に明白な誤記」である。
 
(11) 57頁 比叡山滋賀県)に延暦寺を建てて
比叡山京都府滋賀県の境界にある山。延暦寺滋賀県側なので、「比叡山京都府滋賀県)に延暦寺を建てて」か「比叡山延暦寺滋賀県)を建てて」とすべきである。
 
(12) 148頁 第一次世界大戦が始まる頃の米列強の支配圏は約84%
世界の陸地面積1億3564万kmに対し、1914年の列強非支配地は3777万kmで、割合は27.8%。「内容に誤り」がある。
 
<参考>
旭川学力テスト事件最高裁判決(1976年5月21日 昭和43年(あ)第1614号)

「(前略)殊に個人の基本的自由を認め、その人格の独立を国政上尊重すべきものとしている憲法の下においては、子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入、例えば、誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制するようなことは、憲法二六条、一三条の規定上からも許されないと解することができる(以下略)」
 
<参考>
文部科学省告示第三十三号

教科用図書検定規則(平成元年文部省令第二十号)第三条の規定に基づき、義務教育諸学校教科用図書検定基準を次のとおり定める。
 平成二十一年三月四日      文部科学大臣 塩谷 立
3 正確性及び表記・表現
 (1)図書の内容に、誤りや不正確なところ、相互に矛盾しているところはないこと((2)の場合を除く。)。
 (2)図書の内容に、客観的に明白な誤記、誤植又は脱字がないこと。
 (3)図書の内容に、児童又は生徒がその意味を理解し難い表現や、誤解するおそれのある表現はないこと。
 (4)漢字、仮名遣い、送り仮名、ローマ字つづり、用語、記号、計量単位などの表記は適切であって不統一はなく、別表に掲げる表記の基準によっていること。
 (5)図、表、グラフ、地図などは、各教科に応じて、通常の約束、方法に従って記載されていること。

株式会社自由社
                                            2010年9月21日
                                            横浜教科書採択連絡会
                  生徒配布の歴史教科書の回収と
                  誤りを訂正した教科書の配布要求書
 
 貴社発行の歴史教科書「新編 新しい歴史教科書」(2010、2011年度使用)は、現在横浜市の中学校の約半数、および一部の私立中学校で採択され、使用が始まっています。
 貴社の上記歴史教科書については、検定合格後、貴社自身が文科省に対し40カ所にわたる訂正申請を行いましたが、さらに生徒の手に届けられた供給本においても、多くの歴史研究者や社会科教育関係者から、他社では例の無いような多数の史実や記述の誤り、編集上のミスが指摘され、報道や参考資料集などで一般市民も知るところとなっています。
 横浜市内の多くの中学校では、9月になって貴社を使用した歴史の授業が始まりましたが、ここにきて多くの保護者・市民から疑問の声が寄せられています。その疑問とは、こんなに誤りの多い教科書を、そのまま使用してよいのかという声です。
 
 教科書配布は、国の税金を使って行われますが、一般の商品売買と同様に独占禁止法等が適用され、公正で誠実な商取引が求められます。同時に教科書の特殊性に鑑み、教科書発行者には資本金や役員構成など様々な規制があり、一般図書発行者とは異なる、教科書発行者としての責任を全うすることが求められています。
 商取引においては、不良品の販売がないように注意に注意を重ね、万一不良品を売った場合は、ただちに回収し、適正な新品と交換するのは当然の行為です。
 他の教科書発行者の場合は、誤りやミスがあれぱ、訂正を行った教科書を刷り直して配布したり、正しい表記のシールや正誤表を配ったりして、教科書発行者としての責任を果たしています。英語の教科書では、冠詞や大文字と小文字の欠落や誤りだけで、全ての供給教科書を回収し、訂正版を配布した発行者もありました。
 自由社版に対して指摘された箇所には、史実の間違いだけでなく、キトラ古墳真如堂絵巻の写真の裏焼きや、初出の漢字やルビ、書体の不統一等が余りにも多いことなど、全体を通じて極めて杜撰な編集であったことを示す例が多数あります。したがって、記述内容を訂正し、表記を統一した訂正版教科書を再発行すべきです。
 しかしながら貴社のように、多数の誤りを指摘されてもなお現在まで、再発行はおろか何の謝罪も訂正措置もとっていないというのは、一般社会では考えられない不誠実な行為です。私たちは、保護者・住民として以下を要求します。
 1,判明した供給本の誤りについて、直ちに文部科学省に訂正申請を行うこと。
 2,貴社が速やかに、貴社版歴史教科書の回収と訂正版の発行・配布を行い、教科書発行者としての責任を果たすこと。
 3,当面の措置として、訂正シールまたは正誤表の配布を直ちに行うこと。
                                                        以上

奥付に書かれている代表執筆者の肩書が間違っているという重大な問題になぜ触れないのでしょうか?
※情報・資料提供はこちらにお願いします(これだけ取り上げているのに横浜からは情報も資料も届きません)。hatopoppo2009@yahoo.co.jp
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